栃木県真岡市のTMR industries、所さんに開発の裏側を聞きました。きっかけは冬の雪山で所さん自身が経験した「なかなかお湯が沸かない」というもどかしさ。表面にギザギザを刻んだり穴を開けたりを繰り返し、蓋を作ってようやく今の形にたどり着くまで数ヶ月苦しんだといいます。一番人気はLTクッカーの真ん中のサイズで、それを買った人が後からWRクッカーも買い直すことが多いそうです。
この記事の内容は、すべてこの動画の取材にもとづいています。
この回はスタッキング検証ではなく、栃木県真岡市でLTクッカー・WRクッカーを作るTMR industriesさんへの取材です。聞き手はKALUGII代表のさかた、答えているのはTMR industriesの所さんです。
所さんは栃木県真岡市に住んでいて、北に見える日光や那須の山に登るのが趣味。冬の雪山歩きで「なかなかお湯が沸かない場面に何度も打ち当たって」困っていたといいます。
こりゃ何かうちの技術を使って、早くお湯が沸く鍋を作りたいなって思って
これがLTクッカーを作った背景です。頭の中で構想を練っていた期間は4年ほど。実際に作り始めたのは2年半〜3年前で、形状がある程度固まってからは4ヶ月ほどで発売にこぎつけたとのことです。
最初の試作は、表面にギザギザの凹凸を彫って表面積を増やす形状でした。ただ「実際のところそんなに早くならなかった」そうです。
次はギザギザをやめて、別の方法で表面積を作る形を試しましたが、今度は「全部上に熱逃げちゃって全然うまくいかない」。原因は蓋がないことだと気づき、蓋を作ってみたところ、ようやく「ぴったり合う」形になったといいます。ここまで数ヶ月苦しんだそうです。
その後、5軸複合加工機という機械を導入したことで、現在の細かい形状が作れるようになりました。今のLTクッカーは、この加工機を使った一般的なCNC旋盤の自動加工で作られています。
ラインナップの中で一番売れているのはLTクッカーの真ん中のサイズ(ノーマルサイズ)。そしてこれを買った人が、なぜかあとからWRクッカーも買い直すことが多いそうです。
黒いLTクッカーは、今のところ栃木県真岡市の工場に隣接するカフェ兼展示スペースの店舗だけで販売されています。
黒は一般的なアルマイト加工によるもの。クッカーを作っていると、傷がついたり見た目が良くない個体がまれに出てしまい、「一個作るのに結構な時間かかるんで出るのが惜しい」ため、塗って見た目を整えたのが始まりだったそうです。
現在は真ん中のサイズのみですが、今後は全サイズで黒シリーズを展開する予定とのこと。黒だから熱を吸収しやすいといった機能的な効果は「特にない」そうで、アルマイト加工には米がつきにくいという特性があるといいます。
他社にアルミ製のクッカーが少ない理由を聞くと、加工の難しさが理由でした。「アルミを薄くすると、機械にどこにセッティングするかが非常に重要」で、薄くて軽いぶん機械で挟むと変形してしまうといいます。
薄くて軽いから、こうやって噛むと、もうぐちゃって潰れちゃうんですよ
薄く加工すると破れてしまうこともあり、「アルミの特性上、作るのが非常に難しい」とのこと。ちなみに一般にはチタンが一番軽いイメージがありますが、質量そのものはアルミのほうが軽いそうです。
後半は工場も見学させてもらいました。今の複雑な形状を作れるようになったのは、この5軸複合加工機を導入してからとのことです。加工中は金属の飛び跳ねと摩擦熱を防ぐための液体を使っていて、取材時にはちょうど660サイズが削り出されている最中でした。
スタッキングや周辺ギアについても、実際に使っているものを見せてもらいました。
660サイズのクッカーバッグには、ガスとおしぼりを一緒に収納しているとのこと。使っているのは3ヶ月ほどで土に還る生分解性のおしぼりです。
660サイズを使うときは、まず一番底に660用のLTパンを敷き、その上にMSRのポケットロケット2用のガス缶(110サイズ)を置くとぴったり収まります。もう一つのMSRのガス缶(227サイズ)は、このサイズには合わないとのことでした。
コーヒー用にはウィルドゥ フォールダーカップを使っています。軽くて安いのが理由で、使い始めたのは最近とのこと。330を持っていくときは、お湯を沸かしている間の蓋代わりにすることもあるそうですが、ガスストーブは火が不安定で溶ける危険があるためNGで、火が安定するFDストーブのときだけ使うそうです。火をつける道具はマッチをメインに携帯し、ライターは非常用とのことでした。
新商品については、「今まで世の中にはあるけれど軽くないもの」を、自社の削り出し技術で作る構想がいくつかあるとのこと。情報はInstagramでときどき発信されるそうです。
オンライン販売は主にInstagramの投稿で告知され、金曜日の19時30分から販売開始になることが多いとのことでした。ただし黒いLTクッカーは店舗限定です。実際に手に取って選びたい人は、栃木県真岡市の店舗まで足を運ぶのがおすすめとのことでした。
最後に、所さんからのメッセージです。
町工場がこんなことをするっていうことによって、職人の間口を広くしたいと思って、こんなことをしているんですけど、町工場の可能性を大きくして、職人を一人でも増やして、日本のメイドインジャパンを守るというか、大きくすることに少しでも貢献できたらなっていう思いで頑張って活動しています
所さん自身、勉強が苦手な若者だったそうで、「勉強が苦手だったら職人になろう」というプロジェクトも進めているとのことでした。
今回、取材を受けてくれた栃木県真岡市のTMR industriesの店舗で、LTクッカーまたはWRクッカーを購入した先着5名に、KALUGIIのドリクリップ(コーヒードリップ用の注ぎ口)がプレゼントされるとのことです。
当サイトは、日本一のスタッキング研究者である KALUGII/カルギイ 代表のさかたが運営しています。自社のチタンギアを売っている立場ですが、他社製品も同じように測って、入らないものは入らないと書きます。スタッキングは入るか入らないかしかないので、忖度のしようがありません。
検証してほしいギアがあれば、公式LINEから教えてください。実際に買って重ねて、記事にして公開でお答えします。
KALUGIIチタンカップ300NH/400NHが「どのクッカーに入るか」を1枚にまとめた早見表PDFを、 公式LINEで無料配布しています。
この記事に無い組み合わせで「これ入りますか?」があれば、LINEで教えてください。 実際に重ねて確かめて、記事にして公開でお答えします。 同じことを知りたい人に、まとめて届くようにするためです。
LINEで早見表を受け取る(無料)